インタビュー記事公開 キャリアプラン最前線 ~MBAを目指した3人の女性たち~

インタビュー記事公開 キャリアプラン最前線 ~MBAを目指した3人の女性たち~2019年11月22日

第2回:日本のMBAと世界のMBA

 

インタビュー&カメラ:方喰正彰

 

1回目ではMBAの基本的な内容を中心にご紹介させて頂きました。2回目となる今回は「日本のMBAと世界のMBA」を中心にご紹介させて頂きます。

 

 

 

日本に不足しているリカレント教育

生きながら人生の墓場に入った」という発言が話題になった厚生労働省の現役職員の切実な声にもあるように、優秀な人材が才能を活かされない日本の状況は、海外からみると、ガラパゴス化して人口が減少し、社会インフラが老朽化し、綻び朽ちてゆくように見えているかもしれません。

 

喜多氏によると、「日本人は大学卒業後に再勉強する(リカレント教育)割合がとても少ない状況です。政府としてもリカレント教育の推進に力を入れていますが、社会人がOJTだけではなく専門教育機関に行き高度教育を受けることは世界では珍しくない話です。日本で企業の重要な役職の大部分を大卒=学士課程卒業の人材で構成されていますが、それは世界的にみると特異な状況です。業界や事業のレベルによりますが、他国の大企業では重要な役職には博士号をもった人材が充てられていることが多く見受けられます。」

 

 

日本では修士号取得者が少ない

下記の1つ目の図を見て頂くと、人口100万人当たりの学士、修士、博士の割合が出ていますが、少子化・人口減少で大学が「全入時代」と言われている学士の割合でさえ韓国、イギリス、アメリカを下回る水準です。修士に至っては、そう簡単に追いつけないほどに低水準であることが分かります。博士に至っても同様で、データが古いものとなりますが、統計時点では日本だけが前回調査時よりも減少していることが指摘されています。

さらに2つ目の図を見ると、若年層、若手層において、その影響が深刻であることがうかがえます。

先程の日本全体で割合から見た数字でも芳しくない状況でしたが、年齢を絞ってみるとその厳しい現状がより鮮明となってきます。

 

喜多氏によると、「修士号取得者の国際比較をすると、欧米は勿論のこと、韓国にも大きく水をあけられています。最近では外資系企業では会議は修士号取得者以上でないと出席できないという話すらあります。やはり会議の合理性においても論理を組み立てる学習経験を経ている修士号取得者でないと効率化が悪いということでしょうか。」という懸念の声が上がりました。

(出所:中央教育審議会大学分科会 大学院部会(第93回)参考資料より 2019年6月5日)

 

(出所:文部科学省「高等教育の将来構想に関する参考資料 2018年3月27日」)

 

 

 

― MBA保有者が転職で門前払い?

喜多:「会計学修士」や「ファイナンス修士」のコースの学位を単に「MBA」や「MBA in Accounting」「MBA in Finance」などと表記している学校があります。

「MBA in Accounting」「MBA in Finance」という以上は、そのプログラムの基本内容はあくまでもMBA のはずであり、選択科目あるいはアドバンス科目で、会計学、ファイナンスとなるはずであるが、日本では同列に扱っている場合があり、整合性が取れていません。イギリスQAAの概念ではType 3がMBAでGeneral Management Career Development Courseです。方や会計学や財務はType 1のspecialtyコースになります。

 

しかし、そうしたカリキュラムをよく見ると、日本語で表記された通り「会計学修士」「ファイナンス修士」の内容になっているのです。そして、会計学修士、ファイナンス修士では会計学やファイナンス関連の専門性の高い科目がカリキュラムの中心となっているのです。

そのため、日本の大学院で取得したMBAを持っていざ外資系企業に転職しようとしても、外資系企業の基準でいえば「MBA非保有者」とみなされて、履歴書チェックの段階で門前払いになる可能性が低くないのです(外資の採用は人事ではなく事業担当責任者が採用するため、MBAの事情に詳しい方はMBAの内容が本物であるかどうか見抜きます)。

 

高い授業料を払い、相当な時間を費やして取得したMBAが世間で認められないものと知った時のショックは少なくないでしょうし、日本のMBAの信用低下も危惧されます。

 

― なぜ日本国内で海外のMBAが取得できるのか

喜多:なぜ日本語で海外の学位が取れるのかという質問をよく頂きますが、たとえば、イギリスの場合はバリデーション制度といって、海外の教育機関に認証を与えて、そこで本国側が認証した教育を行うことによって現地に留学をしなくてもMBAが取れるようになっています。その大学が認めた場合に日本語も受け入れるケースもあります。そのほか、中国語、スペイン語、アラビア語などを受け入れているプログラムもあります。

OECD/GATT ガイドラインにもあるように、いわゆる「国境を超える高等教育」という概念があり、イギリスの場合は教育プログラムの輸出を行っています。つまり、イギリスの高等教育をイギリスで受けなくて自国で受けている人が約70万人(世界)で、国別にみると最も多いのがマレーシアの約74,000人、続いて中国の約7万人です。

しかし、今日のグローバル化時代に経営管理学の世界共通言語であるMBAを日本語だけで受講するというのは頂けません。というのは、やはり英語で議論ができなくても課題を英語でしっかりと論理的に書き落とすことができないようではビジネスマネジャーとして通用しません。安易に「日本語だから」「海外大学の学位の方がカッコ良い」ということで海外大学の日本語100%のコースに行こうと考える人もいますが、まずは勉強や仕事が多忙となり、英語の学習ができないまま卒業して、英語できない外国のMBAホルダーとなり却って恥をかくことになりかねません。理想としては授業は日本語でも課題は英語でしっかりと学習させる、そして論文を書かせるというのが理想です(英語100%はかなり難がある方も多いのが実情)。

 

― 日本でのMBAについて最も勘違いとは?

喜多:まず、ほとんどの方は日本の大学の表記しているMBAは文部科学省が認可したと勘違いしているケースが多く見受けられます。文部科学省ではMBAという外国語の学位は認証していません。ましてやMBAという概念も持ち合わせていません。担当部署もなければ認証機関でもありません。MBAについて第三者品質保証機関(国際認証機関など)が認証して初めてMBAといえるものとなります。

日本の大学のMBAと表記しているほとんどが専門職大学院であり、その学位は○○修士(専門職)というのが正しい表記になります。またMBAの学習法は答えが決まっているものに対して記憶してゆく学習ではなく、論理の組み立てを構築する学習になります。日本人はコピペ的な回答の傾向になってしまいがちですが、これでは通用しません。「学習する」のではなく「学習法を学ぶ」ところがMBAです。

 

 

― さまざまな業種からMBAを目指す人が増えている

喜多:以前はMBA入学者といえば中間管理職のビジネスマンが中心でしたが、最近では若いこれから中堅管理職になろうとする方、あるいはバックオフィスにいた人が前線に駆り出されることになり受講する方、更にはIT系の方や医療関連の方、特に医師などに注目が高まってきているように感じます。

それだけ経営管理学の基本を学んでおかないと独りよがりの偏った知識や手法では通用しなくなってきているということだと思います。MBAは経営管理学の世界共通言語であり、例えば自動車を運転するのには自動車免許が必要であることと同じくらい持っていることが当たり前のものとなってきています。

 

 

 

MBAを目指した女性へのインタビュー

2人目:白川仁美さん(仮名)

医師という多忙を極める日々の中で、実際に国内でMBAを取得された30代後半の白川さんにお話をお伺いしてみました。クリニックの開設によってマネジメントや経営に向き合うことになりMBAの取得までされた理由とは――

 

 

簡単にご経歴を教えてください。

医科大学を卒業後、国立病院の医療センターにて初期研修をはじめ各種研修を行い、2012年にクリニックを開設し、院長として勤務。現在は都内のクリニックにて勤務中。

家庭医療専門医、在宅医療専門医。

 

 

 

チャレンジしたMBAはどんなものですか?

European University Business School(EU Business School)-スイス

Master of Business Administration

 

学校の決め手はどこにありましたか?

勤務医として務めながら確保出来る学習時間には制約があるため、従来のプログラムでは通学が困難でした。そこで、その制約を解決してくれて、かつ第三者機関の品質保証のある海外MBA学位を取得出来る新しいプログラムを提供してくれる学校を選択しました。

 

MBA取得までに悩んでいたことがあれば教えてください。

私は、医師9年目に院長として新規分院を立ち上げることになり、同時に法人の理事にも就任したことをきっかけとして、自らのクリニックの運営や法人全体の経営に係わるようになりました。しかし、医師の卒前・卒後教育において、マネジメントや経営に関して学ぶ機会はほとんど無く、突然管理者サイドに就くことになった多くの若手医師同様、手探りの日々でした。

院長業務に限っては、スタッフにも支えられ、手探りでも何とか回せましたが、親ほど歳の離れた男性理事で構成される理事会では全く存在意義を示せずにいました…。

そこで、単なる経験則に依るのでは無く、学術的根拠をもって、より論理的にマネジメントを行えるようになりたいという思いから入学を決意しました。

 

MBAの勉強を始めて得られたことはどんなことでしょうか?

海外MBA学位を取得した医師の著書「MBA的医療経営−目指せ!!メディカルエグゼクティブ」という書籍によると、医療従事者がMBAを目指す意義として以下の3点が挙げられていましたが、実際に自分の現状を振り返ってみてもMBA取得を通してこれら3点に近いことは獲得出来たように思います。

 

1. 思考様式の多面的な訓練が臨床スキルのブレイクスルーを引き起こすこと

  1. 個人、人材、組織のマネジメント・リーダーシップの力を鍛えること
  2. 異分野の人脈形成

 

特に、人脈形成については、MBAコースでは様々な職種・世代の人々と人的交流が図ることができました。そして、多様な価値観を持つ人々とのディスカッションやグループワークは自身の成長に繋がり、その関係性は卒業後の現在も継続しておりこれからの人生のうえでも大きな財産となりました。

 

印象的だった出来事があれば教えてください。

最終講義である上級ビジネス戦略の課題で自施設についてプレゼンテーションを行ったところ、クラスメートから理論的でとても分かりやすかったと高評価をもらえたことが印象的、嬉しい出来事でした。他業種と比べビジネスリテラシーが低いことが入学当初のコンプレックスでありましたが、様々な職種・世代のクラスメートと過ごした貴重な時間が、自身のリテラシーを高めることに繋がったことを実感出来た瞬間でした。

 

MBAにチャレンジして良かったことを教えてください。

経営の世界には答えが存在しないため、これまで慣れ親しんだ絶対正解追求・記憶学習といった手法は通用しないということを知ることができました。医療従事者は人命を預かっている職業柄、誤りは許されず、どうしても知識偏重になりがちですが、経営管理学には記憶しようとせずに広く考えを拡散させる思考力、文献・書籍に書かれた内容を鵜呑みにしない分析力、さらには瞬発力が必要とされるため、MBA学習に取り組むに際して思考様式から見直しが求められ、結果として視野が広がりました。

また、MBAがある種のサブスペシャリティの様な役目を果たし、経営関係の講演・執筆依頼等が増え、活動範囲が広がったり、かつての私と同様にマネジメントや経営について学ぶ機会を欲している若手医師に対してアウトプットする場を与えてもらったりといった副効用が生まれたことは嬉しく思います。

又人前でのプレゼンテーションする度胸と能力が上がりました。

 

やり残したこと、後悔していることなどがあれば教えてください。

短期集中で全力投球出来たので、やり残したことや後悔は一つもありません。

そう思える環境を与えてくれたクラスメートや先生方に心から感謝しています。

 

MBAでキャリアアップを目指す女性に向けてのメッセージをお願いします。

ビジネスにおいて男女間格差を感じたことのない女性はほとんどいないのではないでしょうか?でも、女性だからといって卑屈になる必要はないですよ。

「MBA取得を考えている」という言葉だけで、実際には行動に移せずにいる男性だってたくさんいます。性別に悩んでいる暇があったら、そういった口だけの男性陣を尻目に、さっさとMBAを取得してしまって、誰からも何も言われない状況を作ってしまうのが一番だと思います。MBA取得で女性陣のビジネスにおける未来が拓かれることを祈っています。

 

 

 

今回、世界に目を向けることで日本のMBAや社会人になってからの教育、学習環境について現状を知ることが出来ました。しかし、同時に世界のMBA、学術分野においてレベルが後退している日本の現状を知ることにもなりました。次回は「MBAのその先」を行く新潮流についてご紹介させていただきたいと思います。

 

3回目へ続く・・・ 3回目では「MBAのその先へ」を中心にご紹介します。

 

 


 

喜多元宏氏プロフィール

DBA(経営管理学博士・スイス),MBA(フランス),東大修士(教育)、金工大工学(修士)

フランス・グランゼコールexeDBA中途退学(ENPC)

株式会社エグゼクティブ・ジャパン 代表取締役 / 欧州アジア大学院MBA・DBA学位取得総合教育プロバイダー 代表 / ExeJapan Business School 代表。

1977年、早稲田大学を卒業後、住宅資材関連商社に入社。海外事業責任者として世界40カ国で国際ビジネスを経験。嘗て、中東湾岸戦争直前にイラクのダム建設現場での住宅建設に関わる。1993年、フランス・グランゼコール国立ポンゼショセ校国際経営大学院で国際MBAを取得。在学中、学生運動を起こし学校側と対峙し、その縁で学長補佐官を拝命。帰国後、欧州系企業の本部長、社長を歴任。2002年、イギリス国立ウェールズ大学と交渉、MBAジャパンプログラムを創案、導入、東京で開講。初代プログラムディレクターとなり、2006年に退任。その後、欧州委員会関連機関で欧州ビジネスマンに日本における製造・流通・投資についての教育ミッションを担当する。NPO法人エイジコンサーンジャパン(イギリス最大福祉事業団体日本版)理事。著書『間違いだらけのMBA』(光文社ペーパバック)。

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